未来のサッカー監督とのお話時間を寄付として買ってみる。その1
昨年、毎週の試合と遠征が、自分の体調維持と生活の筋トレになっていた私には、今年は超暇です!!
なでしこ日和での活動をせっせと(見た目は細々と)やっていますが。
今日(5月29日)、ちふれのダイレクターの方が、今年から育成組織のコーチに入っている伊藤香菜子さんのプレー集動画を作ってくださっていたのを拝見したら、もうちょっと、我慢できないほどリアルタイムでサッカーの試合観たいと思っちゃって。
コロナ期間でいちばんしんどい思いをしました。
劇作家の平田オリザさんが「いのちの次に大事なものはみんな違う」ってテレビで仰っていたけど、大事なものが止まってしまっていた方々の気持ちが少しだけ分かる気がしました。
なでしこリーグのチームの練習がようやく再開して、きっと少し気が緩んだんだな。
落ち込んでたら、ツイッターのwoman footballさんと大森琢磨さんが、ブンデスリーガ中継やってるよってつぶやいていらっしゃるのに気づいて。観た!! ケルンに平野優花選手がいて、それだけですごく心強かった(何が??笑)。
観られてよかった。ブンデスリーガ初観戦だったし、普段との違いが無観客であることとソーシャルディスタンスと喪章以上には分からなかったのだけれど、たしかにそこではサッカーが行なわれていた。平野選手、ゴール前でのシュートを身体張ってブロック、頑張ってた。
これがもし本来のサッカーじゃなかったとして、ここから立て直していけばいいのだと思いました。たとえ一進一退しても。
世界でサッカーが再開されたことに、今は感謝をしたいです。
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このコロナの影響期間に、仕事中のテレワーク仕事中ならずとも、Zoom等を使った映像でのライブや発信、会合がどっと増えましたね。ツイキャスも夜はけっこう重い。いろいろな方がばんばん発信してくださるので、視聴する側としてはけっこうお世話になっています。さすがに自分が話すのには縁がないかなぁと思っていたのですが、3回やってみた。
そのうちの1回が、タイトルにある「自分の時間を売って全額寄付するのでお話ししませんか?」という、面白い企画でした。ちょっと目からウロコ的な発想。
発案者は、河内一馬さん(プロフィールなどのご確認はこちらの河内さんの公式サイトで)。
現在アルゼンチンにいらっしゃって指導者資格の取得中、来季から、鎌倉にある男子のサッカーチームで監督をすることが決まっているという方です。
申し込みに関する制限がなんにもなかったので、申し込んでみました。
こうやって何も考えずに申し込む人間がいるわけで、河内さん側は相手を選べないんだから大変ですね。
寄付と何かを抱き合わせるという手法は、最近見かけるようになってきました。
なんだろ、クラウドファンディング(とリターンの仕組み)が一般化してきたからというのもあるのかな、日本人の女子サッカー選手で言うと、現在オーストラリアにいらっしゃる尾田緩奈選手と福丸智子選手がやっている「SEVENF.」もアパレルブランドで、その売上の一部をサッカー環境に恵まれない子どもたちに寄付する形になっていて、その形が素敵だなと思って協力させてもらいました(トレーナー着心地よくて日常に使用しています♪)。お二人は、オーストラリアに行って、選手が何をすべきかの考え方が変わったって仰っていました。
余談になりますが、寄付の話をもう少しさせてください。
抱き合わせ寄付で、個人的に素敵だなぁと思っているものを書いておきたい。
アジアの教育に恵まれない子どもたちに図書館や絵本を届ける運動を、シャンティ国際ボランティア会というところがやっているのですが(たとえ学校がなくても、絵本があるだけで十分教育の素地になるんですよね)、ただ寄付するというだけでなく、絵本を申し込むと、自分のところに送られてきた日本語版の実物に対して、シャンティが用意してくれる付属の翻訳シールをページごとに自分で貼っていって、その本自体が子どもたちに届くという仕組みなんです。
翻訳シールを貼るのも楽しいし(そもそも文字が見たこともないような面白い文字ですし、作業しやすい工夫も随所になされています)、実際にその本を手にとって子どもたちが読んでくれる可能性があるという喜びは、ちょっと他に代えがたいものがあります。
シャンティは、クラフトエイドの形で、その地域の女性たちが雑貨などを手作りして、それを販売したりもしている。デザインがけっこうそれぞれのお国柄を感じる素敵さです。
抱き合わせの寄付って、寄付の思い出が、お金を贈ったことだけじゃなく、相手や自分の手元に残るような感じがいいなぁって思います。よくこういう場合、付加価値という言い方がされるけど、付加っていうんじゃなく、お金そのものの価値への変化がそういう形になっているんじゃないかと個人的には思っています。
ちなみに、寄付という観点から、河内さんは「love.fútbol Japan」という、世界のサッカー環境に恵まれない子どもたちに援助をする団体の理事でもいらして、上に書いたSEVENF.も、寄付先を先日こちらに決めたようです(詳細はこちら)。
そういう繋がりが日本を媒介にしてできるって、何ともご縁な感じ。嬉しくなりますね。
私も現地の状況を伺うことができたので、ほんの少しのサポートをさせていただくことにしました。サッカーを通じた支援の広さ深さには驚くべきものがあると分かったので、それに関しては、いつかどこかで書けたら。
SEVENF.さんとlove.fútbol Japanさんの名前が出たなら、これも書いておこう。
love.fútbol JapanさんのPodcast「社会とサッカー」という連載で、少し前、SEVENF.のお二人が、女子サッカーについて、love.fútbol Japanの代表・加藤遼也さんと河内さんと一緒に、語ってくださっているんです。
雰囲気はのんびりしているんだけど、オーストラリアと日本の違いなど、内容がすごく面白いのでオススメです。
EP5(前編):プロサッカー選手「尾田緩奈さん」と「福丸智子さん」を変えたオーストラリア(『社会とサッカー』love.fútbol Japan・Podcast)2020/04/17
EP5(後編):海外生活を経て考える「女子サッカーはこれからどうしていくべきか?」(『社会とサッカー』love.fútbol Japan・Podcast)2020/04/20
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さて。私がどうやって河内さんを知ったかですが、きっかけは多分ツイッターで、noteで書いておられる記事か何かが流れてきたんだと思います。昨年?一昨年?
そこから、noteで展開しておられる「芸術としてのサッカー論」を飛び飛びで、その後に続く月額マガジン「蹴球症候群」も読ませていただいてきました。
実は、なでしこ日和のブランドを立ち上げるとき=女子サッカーにおけるキャッチコピーを考えるとき、この「芸術としてのサッカー論」に書かれたご意見に違和を唱えるという形でスタートしていて、一方的にお世話になっていました。
詳細は、なでしこ日和の昔のブログ記事に残っているので、よかったら覗いてください。
【記事】女子サッカーにおけるキャッチコピーを考えてみる。(なでしこ日和BLOG)2019/07/05
https://nadeshikobiyori.mymula.jp/wordpress/?p=68
意見の相違があることが分かっている方と面前でお話することになるとは、正直考えていませんでしたが、これから日本で監督業をやるという方が、女子サッカーに対して何を考えておられるか、お尋ねしてみたかった。
今日は、ご了承をいただいたので、トークで伺ったことの一部やそこから自分が考えたことを書きたいと思います。
ようやくたどりつきましたが、これが本題です。
ちなみに、私はこの日、声が出ない期間に当たっており、河内さんは普通にトークで、私はチャット画面で話をさせていただきました。不均衡な状態でのトークを受け入れてくださったことに感謝。
そんな拙い状態だったので、なでしこ日和のことを持ち出す余地はありませんでした笑。
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トークが終わったあとに河内さんが出してくださったツイートはこちらです。
ここに「危機感」という言葉を使っておられます。女子サッカーについてどういう印象を持たれているかを伺ったときに、日本の女子サッカーについて話してくださったことも「危機感」でした。
昨年のフランスW杯、世界ではとても盛り上がっている感じでしたよね。優勝したアメリカは、女性の地位と正当な権利を主張するという圧倒的なモチベーションを持って臨んでいた。サッカーの潮流を導くスポーツブランド(ナイキを筆頭に)も、女子の大会を盛り上げる仕掛けを行なっていました。
河内さんは、自分は日本の外にいるので(その時点でもアルゼンチン在住)、そうした雰囲気を強く感じ取っていて、それが日本に持ち込まれている感じがしなかった、その時点で結果が望めないことが想像できた、と仰っていました。
以下は、私の考えたこと。
上記の河内さんのお考えに関しては、noteの連載「芸術としてのサッカー論」の中にある記事が最も端的に語ってくださっているので、最後まで読むのにはちょっとだけお金かかりますが、女子サッカーにいずれの感覚でも危機感を感じている人にはお読みいただけたらと思います。
女子サッカーについて、マスメディアではない立場でこれほどワールドレベルで真摯に書かれた記事を、私は他に知りません。でも、私も、実は課金までしたのは最近です!←危機感が薄い
【記事】「アメリカ代表」と「羽生結弦」が見せた勝ち方のお手本——。 世界の女子サッカーは今どこで何をしているのか?(芸術としてのサッカー論・note)2019/07/10
https://note.com/kazumakawauchi/n/n514a8fc6e5b6?magazine_key=mbf1c1708bab9
私自身はこの期間にどう思っていたかというと、W杯後に出た永里優季選手の提言に関してブログを書いていて、日本の女子サッカーは物語的な再生の途中にある、という書き方をしました。
【記事】女子サッカー、記憶の最良のバージョンアップを目指して。~永里優季選手の提言に寄せて(なでしこ日和BLOG)2019/07/19
https://nadeshikobiyori.mymula.jp/wordpress/?p=100
あれから1年弱。今のコロナによる、試合開催がまったくできないというまさかの状況において、日本の女子サッカーの物語の道に、大きな変化が起こっていると感じます。
たくさん発信されるようになった選手の皆さんの情報に関しても、選手個人が考え行動すること、という面において、今後にとっていい局面が拓かれる気がしています。
そして、もっと、彼女たちの周囲で、彼女たちを盛り上げていく機運ができないかなぁって。
女子サッカー界における当事者ではなく、かと言ってマスメディアでもない立場で、もっと。
今現在、女子サッカーに熱心な人たちというのは、ライターさんかコアな応援団になるのが普通で、それ以外の数がそれほど多くないといっても過言ではないと思いますが、特に、熱心なコアな応援団の方々というのは、半分当事者だと思うのです。当事者には、言えないこと、できないことがたくさんある(日本ではその感覚がちょっと強すぎるきらいもあるように思います)。もちろん、中から食い破ることだって不可能じゃないかもしれない。
でももう少し。もう少し外側に、女子サッカーを好きな人たちの層ができれば。
私自身はそう願っていて、「なでしこの歩き方」を思いついたあたりから、本格的に、そのために何かしていきたいと考えて行動しています。そして、そういう時点じゃなかったら、多分、河内さんにトーク申し込まなかったと思う。
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さて、話をトークに戻して、河内さんのお話で、日本の女子サッカーで次に問題となりそうだったのは、競技人口の維持の問題。
以下は、基本、私が考えたことです。
中学年代の薄さが嘆かれているなか、高校生以下の育成組織が各チームで盛んになってきたり、徐々にではありますが進んではいます。
河内さんは「グラスルーツ」という言葉を使っていらっしゃいましたが、そのさらに下の年代に関しては、JFAのグラスルーツ宣言に基づいた活動で、ユニクロがタイアップして全国展開してくれている「JFAユニクロサッカーキッズ」、日本各地で小規模に開催されている「JFAなでしこひろば」もありますね。
グラスルーツというのは、文字通り「草の根」のことで、日本で草の根運動などと呼ばれるように、もともとは民主主義を広げるための地道な市民運動、くらいだと思いますが、今では地域に根ざした活動という意味合いになっているようです(2011年に女子サッカーを応援しはじめて右も左もわからなくて、一生懸命HP「中野真奈美さんのこと。」で女子サッカーの情報を集めていた時期に知った考え方です)。
JFAのグラスルーツ宣言では、「“誰もが・いつでも・どこでも”サッカーを身近に心から楽しめる環境を提供し、その質の向上に努めることを宣言するもの」だと書いてあります。誰もが=「年齢、性別、障がい、人種などに関わりなく」。女性方面でも、まさに草の根的に、地道に活動は続いている、と2011年当時からしても感じていますが、雑草並みにもっとどこにでも生えちゃったらいいね、とも思います。
昨年の暮れだったか今年のはじめだったか、「この近所でちっちゃい女の子たちのためのサッカー教室始めますよ~」って、チラシが家(東京都世田谷区)のポストに入ってきたことがあって、めっちゃ嬉しかったけど、流石にこんな子どももいないおばさんが見学に行ったら怪しまれると思って、そのままになったなぁ=コロナ状況に突入。
ゆっくりとでも、手薄な年代の補強ができていけば。そのためには、女子サッカーが今よりさらに、魅力あるものになる必要があるのかもしれません。
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河内さんとのトーク内での女子サッカーの件は、こんな感じ。
その他お話ししたのは、各言語による得意不得意に関することや、日本のサッカーが抱えている(あまりよくない面での)倫理観の話。後者は、私自身が女子サッカーが評価されるうえで感じていた違和感と重なる部分があって、個人的に非常に大事だったのだけれど、今ここでは伝えるのに分かりやすい言葉にできないため、トピックとしてだけ拾っておきます。
(その2に続く)
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